悪臭 wikipedia|無料辞書
悪臭(あくしゅう、en:offensive odor)とは、ヒトに
知覚できる
臭気のうち不快なものを指す。
このこともあり、
法令による規制対象としての悪臭は、
日常生活でいうのとは幾分異なるものとなっている。
◆ 概要
ヒトの
嗅覚は
五感のうちでも特に鋭敏であり、
本能的、原始的な感覚とされ、未解明の領域も多い。
腐敗した
有機物の発する物質を悪臭と感じるのは、進化の過程で
死臭による危険の察知や、
食物の状態を判断するため発達したものと考えられている。
臭気として知覚できる
物質は数十万種はあるといわれ、日常的に「〜のにおい」と表されるものでも、その構成物質は数百に及ぶとみられる。例えば
コーヒーの香り成分からは500種の物質が数えられている。また、ヒトが何らかの臭気を感じた時、それを不快に感じるかどうかは非常に幅が広く、様々な要素が影響することが知られている。
・ 臭気の強さや構成:
香水や
果物などのにおいは、強すぎると悪臭になることが知られている
・ 他の感覚との補完:魚の生臭さは通常不快だが、市場の映像を見せながらだと臨場感を高める効果となる(
バーチャルリアリティ)
・ 体調や状況:いわゆる「気になる」「気にならない」で、時刻や頻度、感じている
ストレスの大きさなど、身体的・心理的状態により感覚が左右される
・ 習慣や価値観:多くの文化が悪臭を放つ
発酵食品などを利用しているように、有益なものの特徴に過ぎないことを知っていれば、不快感は大きく低減され、さらには好意的に受け止められもする(例えば
ブルーチーズや
納豆など)
・
嗅覚疲労、順応:同じ悪臭に曝露され続けるとやがて感じなくなり、これが長期間続くといったん無臭状態を経由しても感じにくくなる
このため、悪臭を
定性的・
定量的にあらわすことは非常に困難であり、評価から人間の
主観を排することができない。
この問題の解決手段として期待されている臭気
センサーの開発は、五感を代替するセンサーのなかでは最も遅れている。これまでに半導体や薄膜、細胞などを利用したものが考案され、製品も市販されているものの、ヒトの嗅覚、特に嗅ぎ分けには追いついておらず、用途は限られている。
◆主な発生源
発生源は多く、その状態に応じて対応策が講じられている。特に地域一帯に悪臭をもたらす規模の場合は
公害とみなされる。
・
産業廃棄物の
野焼きから落ち葉焚きにいたる、野外焼却(苦情件数の4分の1を占め、最多)
・ 喫煙の際にタバコから放出される
副流煙、
喫煙者の呼気から放出される呼流煙
・ 食物を調理するにおいも、
外食産業からは連続・高濃度・大量に排出されるため、悪臭となる
このほか、身近な臭気も規模は小さいが状況により悪臭となる。
◆規制
このため、発生源を特定したうえで、その敷地境界線上での測定値に基づく発生源対策が中心となっている。
かつて、
都市への人口集中を背景として、工場をはじめとする事業場等で使用される材料や製品、廃棄物などから発する臭気が問題となった。
これに対し、
測定可能な悪臭「物質」を定め、その濃度について設けた基準を用い、被害を評価する手法が採られた。
規制されている物質には、有毒なものも無害なものもあるが、嗅覚刺激が強かったり、悪臭被害を招きやすい状況から共通して発生する物質のうち、定量的に測定できる物質が選ばれている。
これにより、悪臭に関する苦情件数は濃度規制導入時の年2万件弱から20年を経て年1万件まで減少したものの、複数または対象外の物質による複合臭気(原因物質が特定できない事も多い)、増加する都市型、生活型と表現されるタイプの臭気苦情への対応には限界があった。
そこで、1996年から
臭気判定士による測定から求めた
臭気指数による規制を行うこととなった。
しかしながら、この改正を境に全国の悪臭苦情件数は急増し、2003年には過去最悪の年2万5千件に達した。その後減少し、2006年度実績は18805件となっている。なお、苦情が急増した背景には当時認識が広まった、野焼きによる
ダイオキシン類生成への警戒感があると見られる。
2000年に環境庁は「におい環境指針」を策定し、環境基準に準じるものとして、臭気環境目標(不快なにおいの低減と臭気に関する望ましい環境の維持・達成)として定性的目標(大部分の地域住民が日常生活において感知しない程度)を設定した。また、定量的目標の設定に必要な数値化手段の開発が
産業技術総合研究所で行われている。
◇特定悪臭物質
法令上は「不快なにおいの原因となり、生活環境を損なうおそれのある物質」とされているが、香料として
食品添加物に利用されているものもある。