紫電改 wikipedia|無料辞書
「
紫電改」(しでんかい)とは、水上戦闘機「
強風」を元に開発された
局地戦闘機 紫電一一型を低翼に再設計した紫電二一型以降を指す(「紫電改」は、試作名称の仮称一号局地戦闘機
改が一般化したもので、
制式名称は紫電二一型である)。局地戦闘機として
太平洋戦争末期の日本本土防空戦で活躍した。
後世の評価は大きく分かれているが、その数奇な運命やネーミングから人気の高い機体である。
米軍を中心とした連合軍側の
コードネームは"
George"、紫電改は大戦中に情報不足から他機種と誤認されていたが、戦後は紫電が
George11、紫電改が
George21とも呼ばれている。日本海軍の搭乗員からは紫電が「
J」、紫電改が「
J改」と呼ばれた。
◆ 開発の流れ
◇ 強風から紫電
昭和16年末、川西は試作中の「
強風」の陸上戦闘機化を海軍に提案。同年12月28日に「仮称一号局地戦闘機」として試作許可を受けた(同時に
二式大艇の陸上攻撃機化も検討されている)。強風は甲戦(艦上・水上戦闘機)として制式名称に「風」の字を含んでいるが、陸上戦闘機化された機体は乙戦扱いとなり、「電」の字を含む「紫電(中国の名剣。転じて
刀剣の美称の一つ)」の制式名称が付与された。
完成を急ぐため、可能な限り「強風」の機体を流用することになっていたが、実際には
発動機を「
火星」から大馬力かつ小直径の「
誉」への換装や尾輪装備のため、機首部の絞り込みや機体後部が大幅に変更されており、そのまま使用できたのは操縦席付近のみであった。しかし主翼については、車輪収容部分を加えた他はほぼ原型のままで、翼型も航空研究所で開発されたLB翼型(
層流翼)が強風より引き継がれている。
昭和17年12月27日に試作一号機が完成したが、「強風」の中翼形式を継承したため採用した二段伸縮式の主脚や「誉」の不調、これに起因する離着陸時の事故の多発、前方視界不良や速度不足などの問題が発生した。しかし、問題未解決のまま昭和18年8月10日に量産が命じられた。これは、従来の海軍主力戦闘機である
零戦では米英軍の新鋭戦闘機に太刀打ちできなくなってきたこと、零戦の後継戦闘機と目されていた「
雷電」の実戦配備が遅れていたことが主な原因である。
◇ 紫電から紫電改
昭和18年3月15日、紫電一一型の難点として挙げられていた視界対策として胴体を再設計することになり、同年
12月31日、「仮称一号局地戦闘機
改」試作一号機が完成した。
主翼配置を中翼から低翼とし、また胴体全体を「誉」の直径に合わせて絞り込んだことで離着陸時の前下方の視界も改善された。トラブルが多かった二段伸縮式主脚も主翼の低翼化に伴い廃止された。同時に部品点数を紫電一一型の2/3に削減して、量産性を大幅に高めていた。
主翼配置が中翼から低翼式に変更されたが、主翼の外形は強風・紫電一一型と同様であった。また紫電一一型・一一甲型(N1K1-Ja)では20mm機銃2挺をガンポットとして主翼下に外付けしていたが、紫電改では紫電一一乙型(N1K1-Jb)と同様、4挺とも翼内装備としている。また零戦が採用した「操縦索の剛性低下」と同様、低・高速度域における操舵感覚と舵の効きの平均化を可能とする腕比変更装置が導入された他、「強風」以来の
自動空戦フラップも改良により実用性を高めている。当時、川西航空機のテストパイロットだった岡安宗吉氏はこれを評価しているが、
坂井三郎少尉は戦後のインタビューで、「うまく動作するときは良いが、
水銀が酸化してすぐに動作しなくなる」と評している(ただし、水銀が常温で酸化することはありえない)。また、熟練搭乗員の中にはフラップ作動による速度低下を嫌い、自動空戦フラップを使わず空戦に挑んだものもいたという。
零戦で問題となった防弾装備については、主翼や胴体内に搭載された燃料タンクは全て防弾タンク(外装式防漏タンク)であり、更に自動消火装置が装備されていた。米軍の調査によると、燃料タンクにセルフシーリング機能は無かったとされるが、2007年にオハイオ州デイトンにおいて復元のため分解された紫電二一甲型(5312号機)の燃料タンク外側に防弾ゴムが確認できる。[丸1月別冊『蘇る海鷲 最強戦闘機「紫電改」』(潮書房)]。操縦席前方の防弾ガラスは装備されていたが、操縦席後方の防弾板は計画のみで実際には未装備だったとされている。しかし、防弾板が装備された機体を目撃したという搭乗員の証言もある。
◆ 派生型
;十五試水上戦闘機/強風一一型(N1K1)
:紫電シリーズの母体となった水上戦闘機。発動機は「雷電」と同じ火星一三型を搭載。武装は翼内20mm機銃2挺、胴体7.7mm機銃2挺。試作一号機のみ二重反転プロペラを装備。
;仮称一号局地戦闘機/紫電一一型(N1K1-J)
:発動機を火星一三型から誉二一型に換装した陸上戦闘機型の極初期型。武装は翼下の20mmガンポット機銃2挺、胴体7.7mm機銃2挺。
;紫電一一甲型(N1K1-Ja)
:胴体の7.7mm機銃を廃止し、翼内20mm機銃2挺を追加した武装強化型。
;紫電一一乙型(N1K1-Jb)
:翼下の20mmガンポット機銃を廃止して翼内に20mm機銃4挺を内蔵した型。増速用火薬ロケット6本装着の機体存在。
;紫電一一丙型(N1K1-Jc)
:一一乙型の爆装を60kg爆弾4発または250kg爆弾2発に強化した型。試作のみ。
;仮称一号局地戦闘機改/紫電二一型(N1K2-J)
:胴体を誉に合わせて細く再設計し、主翼配置を低翼式に変更した改修型。後期生産型では垂直尾翼面積を縮小。
;紫電二一甲型(N1K2-Ja)
:二一型の爆装を60kg爆弾4発または250kg爆弾2発に強化した型。
;紫電二一練習戦闘機型(N1K2-K)
:二一型を複座とし練習機としたもの。
;紫電三一型(N1K3-J)
:紫電改一。二一甲型の機首に13mm機銃を追加した武装強化型。試作のみ。
;紫電四一型(N1K3-A)
;紫電三二型(N1K4-J)
:紫電改三。三一型の発動機を低圧燃料噴射装置付きの誉二三型に変更した型。試作のみ。
;紫電四二型(N1K4-A)
:紫電改四。三二型に着艦フックなどを追加した艦上戦闘機型。試作のみ。
;紫電五三型(N1K5-J)
:紫電改五。発動機をハ四三-一一型(離昇2,200馬力)に変更した型。試作のみ。
:他に誉四四型装備の計画があった。
◆ 諸元