質量 wikipedia|無料辞書
重さ(重量)と混同される場合も多いが、両者は異なるものである。
◆質量の概念
月面では物体の
重さが地球上の約1/6になる。しかし物体そのものが変化するわけではないので、その質量は変わらない。これらの違いは何であろうか。
重さとは実はその物体にかかる
重力のことであって、月面では重力が地球上の約1/6になるということである。一方、質量はその物体を特徴付ける量であって、同じ物体である限りは変わらない。重力は
万有引力とも言うが、二つの物体間に働く引力であり、その二つの間の距離とそれぞれの物体の性質とに応じて働く力である。この重力を決定する性質を「質量」と呼ぶ。
ある物体を月面に置いたとき、その物体と月との間に働く重力は、その物体の質量と月の質量、および月の中心からその物体の中心までの距離によって決まる。これをその同じ物体を地球上に置いた場合と比べると、物体の質量は同じだが、地球の質量と月の質量の違い、地球の半径(地球の中心と物体の間の距離)と月の半径の違いが合わさって、結果的に月面に置いた場合の重力は地球上に置いた場合の重力の1/6になる。すなわち、「質量」とは重力を生み出す元であり、生み出された重力が重さであると言える。
また、「
運動の第2法則」と呼ばれるものがある。これは、言い換えれば軽いものは簡単に動かせるが、重いものを動かすには力が要る、という様なことである。あるいは、飛んできたものを受け止めるとき、軽いものは簡単に受け止められるが重いものはその勢いで後ろに下がったりしなければならない、ということでもある。これは重さといいながら実は重力とは関係が無く、
慣性という性質による。この慣性の大きさを決めるものはやはり「質量」である。より正確な言葉で言い直せば、質量の大きな物体ほど動かすには大きな力が必要であり、止めるにも大きな力が要る、その逆に質量の小さな物体ほど少ない力で動かすことが出来、止めるにも少ない力で済む、ということになる。この慣性の大きさを表すために質量という量を用いる。
これら二つの場面で出てくる「質量」すなわち重力の元としての質量と慣性の大きさを示す質量とは力学的には別の概念であり、それぞれ「重力質量」「慣性質量」と呼ばれている。
◆2つの質量
質量の定義には慣性質量と重力質量の2種類がある。
:
これは実際に実験を行い、物体をある力で引っ張ったときの加速度を調べ、比例係数を計算することで求められる。慣性質量は物体の動きにくさ(あるいは止まりにくさ)を表す値であるといえる。これに対して、
重力質量 mg は、地球との間に生じるものについて言えば、物質物体に働く地球の
重力 Fg、地球の重力質量
Me、地球と物質の重心間の距離
r、
重力定数 G を用いて次の様に表される。
:
これは
体重計などで計ることができる、我々の直感的にイメージする「重さ」を生じさせる質量である。
◆相対論的質量
光速に近い速度で運動する物体の質量が増えるといわれることがある。これは相対論的質量とよばれる考え方で、ニュートンの運動方程式
F =
ma が亜光速でも正しくなるように、相対論的効果を質量に押し付けた結果生ずるものである。現在では、このような相対論的質量の考え方を用いないのが一般的である。詳しくは
特殊相対性理論を参照。
◆質量の発生
なぜ物体は質量をもっているのか、という自然界の根源を探るような研究もなされている。その答えとなりうるヒッグス機構では、真空中には
ヒッグス粒子が満ちており、物体が加速度を受ける際にこのヒッグス粒子との相互作用の影響を受けるとされる。静止している物体を動かそうとするとその物体は周囲のヒッグス粒子から抵抗力を受ける。これが慣性として認識されるものである。物質によってヒッグス粒子から受ける力の大きさが異なり、したがってそれぞれに動かしにくさが異なる。この動かしにくさがその物質の質量である。「重い物体ほど動かしにくい」のはこのためである。相対性理論によれば、静止している物体と等速運動をしている物体とは全く同等に扱える。動いている物体を止めようとするのは静止している物体を動かそうとするのと同じことであり、やはりヒッグス粒子の作用を受ける。この作用の大きさは静止していた場合と同じであり、動かしづらい物体、すなわち質量の大きい物体ほど止めにくいことになる。なお、質量に素量が存在するかどうかは知られていない。仮に素量が存在すれば少なくともニュートリノ質量(具体値は未測定)以下ということになる。
◆ 他の物理量との関係
マクロな物質の質量は同一物質で
同温・
同圧の条件下においては、経験的に
体積におおよそ比例することが知られている。この性質から、特に温度や圧力による体積変化が少ない
固体・
液体において、物質ごとに定まる物理量としての
密度が用いられる。
これより、均一物質を分けた場合、その体積比と質量比はおおよそ一致することとなる。この性質により、物質を根源となる粒子まで細かく分けていけば、その粒子の種類ごとに質量が定まり、その粒子の質量の総和が物質の質量となるという、いわゆる
原子論の類の説が説得力を持つことになる。
アヴォガドロの分子説の根幹である「同温・同圧の気体中には同数の
分子が存在する」という主張も、体積と質量の比例関係から一定の説得力を得られるのである。これらの
化学の発展に基づき、同一物質であれば質量に比例する
物質量が定義されるに至った。
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